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担当:喜熨斗智也(救急救命士)

第1回 マラソンランナーと突然死の関係

日本のマラソンブーム

日本では2007年に初めて東京マラソンが開催されて以降、ランニング人口は増え続け、ここ数年500万人以上(日本の人口の約4.3%)の方が週に1回はランニングを楽しんでいます(図1)。また、株式会社アールビーズの調査では、2014年に日本で開催されたマラソン大会の数は1,889大会と、前年の2013年に比べて約300大会増加しているとの報告があり、日本では2007年以降のマラソンブームからランニングが定着していると言えます。

図1:日本のランニング人口の年次推移(参考 笹川スポーツ財団「スポーツライフに関する調査報告書」(1998~2022))

ランニングと突然死の関係

特別な道具が必要ではなく、誰でも気軽に始めることができるマラソンですが、一方で危険な面もあります。ランニング人口が多いのも要因ですが実は突然死が最も多いスポーツがランニングなのです(表1)。


表1:スポーツ中の突然死(参考 村山正博ら:運動事故の発生要因および運動し同報に関する研究報告所,1992年)

東京マラソンとアメリカのランニングと突然死のデータ比較

アメリカでは、マラソン中の心肺停止は10万人あたり0.54人、つまり約18万5千人に1人の割合で発生し、そのうち71%の人がそのまま亡くなっているという報告があります。
一方、東京マラソンは過去16回(2007年〜2023年)開催され、約51万9千名のランナーが参加し、そのうち11名のランナーが走っている最中に突然倒れ、一時は心肺停止に陥ってしまいました(表2)。

表2:東京マラソンの参加ランナーと心停止になったランナー数

東京マラソンだけをみますと、約4万7千人に1人、10万人あたり2.12人の割合です(表3)。この数字は決して少なくなく、アメリカと比較すると、マラソンン中にランナーが心肺停止になる割合は東京マラソンの方が約3.9倍高いと言えます。

表3:東京マラソンとアメリカ国内のマラソン大会でみたランナーの心肺停止発生数、救命率の比較

心肺停止になったランナーを救命するために

アメリカのデータでは心肺停止になったランナーの多くが亡くなっていますが、東京マラソンは違います。周りを走っていたランナー、大会をサポートしていたボランティアや救護スタッフの救命活動によって、100%救命されています。一時的に心肺停止になってしまった場合でも、迅速に適切な救命処置が行われれば、救命できるチャンスは十分にあります。

救急救命情報のページでは、心肺蘇生法やAEDを含めた救命手当の方法についてお伝えしていきます。ぜひ、毎回お読み頂き、もしマラソン中に周りを走っているランナーが突然倒れたときには勇気を持って救命活動へのご協力をお願いします。

1) Kim JH, Malhotra R, Chiampas G, d' et al : Cardiac arrest during long-distance running races.N Engl J Med. 2012;366;130-40.

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