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ランナーの方に向けたご案内です。
東京マラソンのウェブサイトでは、アンチ・ドーピングに関する話題を10年以上前から提供してきています。残念なことに、最近のドーピング関連報道はスポーツ界のみならず、社会的にも大きな問題となっています。
少しでも多くの方々のアンチ・ドーピングに対する理解が、ドーピングに対する大きな抑止力となるように、情報発信を続けていきたいと考えております。
そこで、「クリーンランナーをめざして」では、最新の情報や重要な事柄について、質問に答えるような形式でご紹介したいと思います。第1回目は「東京2020大会ではドーピング検査が実施されましたか?」という質問に答えます。
過去最多の金メダルを獲得した日本選手団の活躍に、コロナ禍ではあったもののテレビに釘付けとなった方もいたかと思われます。晴海の選手村では試合前にドーピング検査を受けた選手もいましたし、競技会場でメダリストとして試合後に検査を受けた選手もいました。
中には、残念ながら予選敗退となったにもかかわらず、検査を受けた選手もいました。「どうしてそんなに詳しいことを知っているのか」と言うと、私が日本オリンピック委員会本部ドクターとして、大会期間中ずっと晴海選手村に滞在して、日本選手団をサポートしていたからです。
国際オリンピック委員会から検査を委託された国際検査機関の発表によると、尿と血液を合わせて5000件のドーピング検査実施を予定していたそうです。既に数件の違反事例が判明しており、競技前の抜き打ち検査で違反が判明し、競技に参加出来なかった選手もいました。もちろん日本人選手の違反事例は報告されていません。
日本陸連では、日本記録樹立時に認定要件としてドーピング検査実施が求められています。今大会では、男子3000mSCと女子1500mで日本新記録、男子4×400mリレーで日本タイ記録が樹立されました。これまでの大会では競技会場で検査が実施されていましたが、今大会では晴海選手村内のドーピング検査室で実施されました。予選、準決勝と2回の日本新記録を樹立した選手は、記録公認のために申請して2回のドーピング検査を受けました。
さて、今回の検査で採取された尿、血液検体は今回の検査が終わってすぐに廃棄される訳ではありません。検体は10年間保管され、検査技術が向上した10年後、廃棄される前までに再検査されることになっています。従来の保管期間は8年間で、リオの直前に北京オリンピックの検体が再検査されて、陽性が判明した事例もあります。ドーピングをする方と検査技術向上のイタチごっこが行われているのは悲しい現実です。しかし、クリーンなアスリートを守るためにもドーピング検査とその技術向上は不可欠なものです。