車いすマラソンは午前9時5分、天候は晴れ、気温14度、湿度42%という気象条件のなか、全30選手(男子21、女子9)が東京都庁前を一斉にスタートしました。
男子は、パリ2024パラリンピック銅メダルの鈴木朋樹(トヨタ自動車)が従来の大会記録を1分43秒上回る1時間19分14秒で優勝しました。鈴木は2位に11分14秒差をつける圧倒的な強さで、大会2連覇を果たしました。
「天候にも恵まれたが、大会記録を更新でき、連覇も達成できて嬉しい。沿道の応援のおかげで、最後まで気持ちを切らさず走れた。日本語での応援が海外レースにはない東京マラソンの醍醐味」と喜びと感謝の思いを口にしました。
レースはスタートから鈴木を中心に先頭集団が形成されましたが、5㎞地点までに西田宗城(バカラパシフィック)と2人で先頭に立つ形となりました。しかし、8.5km付近で西田が遅れだしたことを機に鈴木がペースを上げます。単独走になって以降も自身のもつ日本記録(1時間18分37秒)更新も期待されるようなラップを刻み、最後まで淡々とレースを進めた鈴木が両手を広げて歓喜のフィニッシュに飛び込みました。
2日前の招待選手会見では「面白いレースを見せたいので、ハーフまでは集団で走りたい」と話していましたが、序盤から2人に絞られペースが鈍ったこともあり、「手を抜くレースになってはならない。目標を『大会新記録』に切り替えて、レースを面白くしようと思った」と振り返りました。
パリ2024パラリンピック後、「1回リセットが必要」と心身ともにしっかりと休養を取ったことで、今大会に向けて十分な調整ができていたわけではなく、「例えていうと、冷蔵庫の残り物でお弁当を作る気持ちで走った」という鈴木。その上で、「ビル風の強い東京で、1時間20分を切れたのは、ひとつ評価してもいいのかな」と話しつつ、「うぬぼれてはいけない。細かい部分にも目を配り、さらに強化していきたい」と、さらなる高みを見据えていました。
2位にはパリ2024パラリンピック6位の羅興伝(中国)が1時間30分28秒で入りました。初出場となった東京マラソンについて、「走り込みが万全ではなく、今は疲労感が強いが、路面もきれいだったし、沿道からたくさんの声援が聞こえて大きな励みになった」と好印象を口にしました。「タイムには満足していないが、シーズン初レースでもあり、納得している。東京にはまた出場したい」と笑顔を見せました。
3位は章瑩(中国)でした。第3集団から徐々に追い上げる粘りを見せ、1時間30分57秒で入りました。東京マラソンは初出場でしたが、4年前の東京2020パラリンピックでは11位に入っています。「4年ぶりに東京の街を走れて楽しかったし、沿道の応援に感動したし、力になった。順位もタイムもよくて嬉しい」と充実の表情で語りました。
女子も上位2名が大会記録を塗り替える高速レースとなりました。優勝はパリ2024パラリンピック金メダルで世界記録保持者のカテリーヌ・デブルナー(スイス)で、マークした1時間35分56秒は大会記録を47秒更新しました。2位に入ったパリ2024パラリンピック銅メダルのスザンナ・スカロニ(アメリカ)も1時間36分28秒で、従来の大会記録を15秒上回りました。3位にはパリ2024パラリンピック5位の周召倩(中国)が1時間37分46秒で食い込みました。
初出場初優勝を果たしたデブルナーは、「東京は以前から走ってみたいと思っていた大会で、ようやくかなった。素晴らしいデビュー戦となった。コースもきれいで走りやすかった。レースは速い選手が揃っていて最初は集団になったが、途中からスザンナと2人で競り合う形になった。40㎞地点をすぎて徐々にペースを上げ、最後のコーナーでラストスパートをかけた。勝ち切れてよかった」と、デッドヒートの勝利を笑顔で振り返りました。
1時間40分33秒で日本人1位、全体6位に入った土田和歌子(ウィルレイズ)は、「例年になく良い気象条件で走りやすかった。世界トップ選手たちが勢ぞろいするレースなので、力試しと思って走った。まだ課題はあるが、(現時点では)いいレースができたと思う」とうなずきました。
副島正純車いすレースディレクターは、風もそれほど強くなく暖かい天候は、「車いすレースにとってはいい条件だった。大きなトラブルなくレースが終了したし、男女とも大会新記録が樹立されてよかった」と総括しました。
10㎞地点に設定されていた「東京マラソン独自のスプリットタイムボーナス」については、男子は鈴木と西田の2人が、女子はデブルナー、スカロニ、周の3人が設定タイムをクリアし、賞金が贈られました。序盤からレースペースが上がる狙い通りの展開となり、副島車いすレースディレクターは「選手も気持ちよく走ってくれたようだし、観客にも面白いレースになったのではないかと思う」と手応えを口にしました。
なお、同じスタート時間で試行実施したAbbott WMM大会に参加経験のあるDuo Team 4組も、無事に完走することが出来ました。