東京マラソン2025のレース2日前となった2月28日(金)、 車いすマラソン招待選手会見を開催しました。
選手登壇の前に、東京マラソン財団理事長の早野忠昭が挨拶に立ち、東京マラソン2025の取り組みなどについて説明しました。2007年にスタートした東京マラソンはコロナ禍で1回の中止をはさみ、今年で18回目。2027年に迎える20回記念大会に向けて、初めてノンバイナリーカテゴリーを設けるなど新たな取り組みも行っています。「2027年に、『世界一の大会となること』を目指し、今年も『安全・安心』『エキサイティングなレース作り』『ホスピタリティ』の3つの柱をしっかり実施して、いい大会にしたい」と語りました。
■女子はパリ2024パラリンピックのメダリストが勢ぞろい
会見は女子から行われ、副島正純車いすレースディレクターと、海外からカテリーヌ・デブルナー(スイス)、マディソン・デ ロザリオ(オーストラリア)、スザンナ・スカロニ(アメリカ)と、日本の土田和歌子(ウィルレイズ)、仲嶺翼(ミサトスイミングスクール)の5選手が登壇しました。
デブルナーは女子車いすマラソン(T53/54)の世界記録保持者で、昨年のパリ2024パラリンピック金メダルをはじめ、アボット・ワールドマラソンメジャーズ16も2連覇で制しているトップランナー。東京マラソンは今回が初出場となり、「デビュー戦になるが、素晴らしい高速コースと聞いている。体調もよく、天気もよさそうなので、いいレースになると思う」と展望。スタートからの積極的なレースを持ち味とするデブルナーですが、「昨年はハードな1年だったので、この冬は少し体調を崩して回復に時間がかかった。東京は今年初のレースなので、スタート(のスピード)は期待しないで」と笑顔で話しつつ、「今はフィジカルもメンタルも回復しているので、先頭集団に入って展開を見ながら頑張りたい」と意欲も見せました。
デ ロザリオは前回4位で、パリ2024パラリンピックでは銀メダルを獲得。「パリ後は少し長くオフを取ってから、新たなプログラムを取り入れ、練習を再開した。練習の効果が出るのはまだ先だと思うが、このレースでいろいろ試したい」と意気込みました。
前回3位で、パリ2024パラリンピック銅メダルのスカロニは、「東京マラソンは何度も出場している大好きな大会。スタートもフィニッシュも少しテクニカルだが、素晴らしいコース。できるだけ集団のレースにしたいが、とにかく、いいレースになることはお約束します」と、順調な調整ぶりをうかがわせました。
前回6位で、パリ2024パラリンピックも6位の土田和歌子(ウィルレイズ)は、「東京出身なので、いつも楽しみにしているレース。世界の素晴らしい選手たちと一緒に走れることを誇りに思う。とにかく前を追いかければ、タイムも出て自分の成長も感じられると思う。沿道からの応援を力にしたい」と見据えました。
日本記録保持者で、前回7位の仲嶺は今年の冬は沖縄も寒く、屋内練習が多かったと言い、「久しぶりのロードであり、1年のスタートとなるレース。素晴らしい選手ばかりなのでひたすら前を追いかけるのみかもしれないが、楽しみながら全力を尽くしたい」と力を込めました。
■連覇を狙う鈴木を追うのは?
つづいて男子の会見も行われ、海外勢は羅興伝(中国)とユ・ビョンフン(韓国)が、日本勢は鈴木朋樹(トヨタ自動車)と吉田竜太(SUS)が壇に上がりました。
羅はパリ2024パラパラリンピック6位と世界での存在感を高めつつある若きランナー。東京マラソンは初出場ですが、「コースはインターネットで起伏の状況などを調べた。中国の冬は寒く、あまり走り込めていないが、鈴木選手に食らいつき、今年初のレースで今年最初のメダルと自己ベスト更新を目指して頑張りたい」と自信ものぞかせました。
パリ2024パラリンピック12位のベテラン、ユは、東京マラソンは2019大会以来2回目。同年は冷たい雨に阻まれ、無念の途中棄権でした。「今年は天気が良さそうなので、しっかり完走したい。私も鈴木選手について、いいレースにしたい。前回は観客の応援に感動した。今回も観客の皆さんと一緒に走る思いで、自己ベストを目指したい」と雪辱を期していました。
2024大会を独走で優勝した鈴木は、パリ2024パラリンピックで銅メダル獲得後はしっかり休養後、今年は2月のトラックレースから始動しています。マラソンは今大会が初レースですが、連覇が期待され、他の選手からもマークされる存在です。「目標とされるのはありがたい。去年と同じ(独走)だと、『再放送?』と思われてしまうので、今年はハーフまでは集団で走りたい」と会場を和ませたのち、「集団でのレースではタイムを狙うのは難しいが、後半は優勝を目指して走りたい」と連覇への闘志を燃やしていました。
パラリンピックメダリストとして臨む初めての東京マラソンです。「日本の首都、東京を通行止めして走らせてもらえる貴重なレース。車いす選手の速さや駆け引きを見て面白いと思ってもらい、競技の普及につなげることもメダリストの役割だと思う。また、子どもたちから、『こんな選手になりたい』と目標されるように、いい結果を出したい」と意気込みました。
前回4位の吉田は、パリで8位入賞後、「少し長く休息を取った。今季初レースなので、他の選手にしっかりついていきたい」と目標を口にし、「蔵前橋など上り坂を腕の力だけで駆け上る車いすのレースを見てほしい」と競技の魅力もアピールしました。
副島車いすレースディレクターは今年のレースを展望し、「女子はデブルナー選手、男子は鈴木選手が軸になると思うが、他の選手は二人を逃さず、集団が形成されれば、駆け引きも楽しめる面白いレースになるはず。応援しています」と選手にエールを送りました。
車いすレースでは今年も大会記録更新を目標にした「スプリットタイムボーナス」が10㎞地点に設定されています。男女それぞれ大会記録から算出した目標タイム(男子は18分50秒、女子は21分45秒)を上回った上位3名にそれぞれ賞金が授与されます。スタートからハイペースな展開が期待され、副島車いすレースディレクターはマラソンファンに向けて、「世界のトップランナーたちによる高速レースをぜひ楽しんでほしい」と呼びかけました。
車いすレースは3月2日(日)9時5分、東京都庁第一本庁舎前をスタートします。