スタート時の天候はくもり、気温8.7度、湿度48%、少し風はありましたが、寒くなく、車いす選手にとってはまずまずの気象条件下での開催となりました。
午前9時5分、全25選手(男子19、女子6)が一斉にスタートしました。男女とも、世界記録保持者がともに大会記録を塗り替える圧巻の走りを見せ、優勝。2位にはアジア記録保持者の日本選手がつづくという結果となりました。
男子はマルセル・フグ(スイス)が1時間20分57秒で大会記録を55秒更新し、大会2連覇を飾りました。25㎞すぎの上り坂で、並走していた鈴木朋樹(トヨタ自動車)を振り切り、独走状態になって以降、さらにペースを上げ、ネガティブスプリットでフィニッシュする快走でした。
「優勝でき、大会記録も更新できて、メンタル的にも最後まで落ち着いたレースができ、とても満足している。ボランティアや沿道の観客の応援がすばらしく、とても力になり、素晴らしいレース体験となった。ありがとうございます」と語りました。
また、勝負どころとなった25kmすぎのスパートについては、「もう少し先でのスパートを考えていたが、いいリズムを刻めていたのと、風も弱く、ちょうど橋に差し掛かり、『ここで、行けそうだ』と閃いた」と、自身の走りのフィーリングを信じ、レースプランを変えたと言い、"絶対王者"フグの強さを見せつけるレースでした。
2位には鈴木が1時間24分31秒で、3位には渡辺勝(凸版印刷)が1時間30分32秒で入りました。
鈴木は、「25㎞までマルセル選手と走れたのはよかったが、(彼のスパートは)自分がどれだけあがいても追いつけるスピードではなかった」と悔しさをにじませ、「今は次元が違いすぎるので、今後はまず、彼のレベルに到達するのが目標。そこに到達した日本人はまだいないと思うので、先駆者としてやっていきたい」と力強く前を見据えました。
女子はマニュエラ・シャー(スイス)がスタート直後から抜け出すと、独走体勢のまま大会記録を3分17秒も更新する1時間36分43秒でフィニッシュし、3大会ぶりの優勝を果たしました。また、10㎞地点に設定された車いすレース独自の「大会記録更新スプリットタイムボーナス」(女子:21分48秒)も男女通じて、ただ一人達成する快走でした。
「とてもいい日で、レースも大変楽しめた。2021年の東京パラリンピック以来の東京でのマラソンとなりましたが、東京は私にとって特別な場所。車いすマラソンが日本でとても評価されていると感じるレースだった」と、笑顔で喜びを語りました。
2位は喜納翼(琉球スポーツサポート)が1時間42分47秒で、3位はマディソン・デロザリオ(オーストラリア)が1時間44分17秒でフィニッシュしました。
喜納は、「マニュエラ選手のスタートの位置取りがうまかったので、私も今後、練習したい。今日はずっと一人旅だったのでフォームを意識したり、苦手な上り坂などを実戦練習と思って走った。沿道はにぎやかで楽しく、どこからも応援を得られる感じがして元気をもらえた」と感謝しました。
副島正純車いすレースディレクターは選手として5位にも入り、「風が強かったように思ったが、男女とも大会新記録が出たし、大きな事故もなく、いいレースだった。スタートからフィニッシュまで沿道の応援が温かく、選手の名前を呼ぶ声もたくさん聞こえた。車いすマラソンの認知度の向上を感じ、嬉しかった」と総括しました。