本日1月28日(火)、海外・国内のマラソン招待選手、エリート選手を発表しました。
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東京マラソン2020エリートレース展望
東京マラソンはフィニッシュ地点を変更した2017大会から、平坦な高速コースとなり、好記録が生まれて居ます。以前から掲げてきた「グローバルスタンダード」のレースとして、広く認知されてきたのではないでしょうか。
一昨年は設楽悠太(Honda)が2時間6分11秒で16年ぶりに日本記録を更新し、歴史を動かす走りをみせてくれました。日本実業団陸上競技連合のマラソン特別強化策「Project Exceed(プロジェクト・エクシード)」により、日本記録を樹立した設楽には1億円の褒賞金が送られ、大いに盛り上がりました。昨年は雨が降り、レース中盤から一段と冷え込む厳しい条件下にもかかわらず、ビルハヌ・レゲセ(エチオピア)が2時間4分台で悠々と駆け抜けました。力強い走りは世界レベルを存分に示してくれました。
今年、第14回大会は、さらにエキサイティングなレースになるでしょう。
男子ではディフェンディングチャンピオンのレゲセが再び参戦します。昨年9月のベルリンマラソンでは優勝こそ逃しましたが、2時間2分48秒の好タイムでフィニッシュ。自己記録を伸ばし、さらに力をつけて東京に帰ってきます。また、昨年のドバイマラソンで優勝したゲタネ・モラ(エチオピア)、2019ベルリンで3位に入ったシサイ・レマ(エチオピア)の2人は、2時間3分台の自己記録を持ちます。その他、唯一の複数回優勝者(2014,2018)で試合巧者のディクソン・チュンバ(ケニア)を含め、2時間4分台の選手が5人います。
おそらく、レゲセが中心となり、国内最高タイムの2時間2分台を目指すレースをしてくるのではないでしょうか。
そして、東京五輪代表の残り1枠を争う、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)ファイナルチャレンジを兼ねる日本勢の争いも過熱するでしょう。大迫傑(Nike)と設楽の新旧日本記録保持者による同級生対決は大きなみどころです。そこに東京マラソン2018で2時間6分54秒の自己記録をマークした井上大仁(MHPS)も加わってくるでしょう。
東京五輪の3枠目は日本陸連の設定記録である2時間5分49秒を突破した最速選手が出場権を得ます。該当者がいない場合は昨年9月のMGCで3位に入った大迫がそのまま代表になります。大迫はレースに出場せず、「待ち」の姿勢をとることもできたでしょう。しかし、黙って見ているより、自ら出場して、勝負に挑む。そのスピリッツは素晴らしいものがあります。やはり負けたくない、日本記録保持者の意地があるのではないでしょうか。
設楽にとって東京は慣れ親しんだコースです。日本記録のいい印象も残っていると思います。ひょうひょうとしていますが、学生時代から切磋琢磨してきた同級生の大迫を強く意識しているはずです。序盤から日本記録の更新を狙って、持ち味である攻めのレースをしてくることでしょう。
井上は一昨年の記者会見で目標タイムを「2時間6分0秒」と掲げたことが強く印象に残っています。常に世界レベルを見据えてきた証しでもあります。MGCは残念な結果に終わりましたが、元旦のニューイヤー駅伝の4区で区間新記録を樹立し、復活をアピールしました。
3選手がどのような準備をして、レースに挑むのか。一番の目玉といっていいでしょう。天候次第では日本記録更新の可能性も十分に秘めています。
現段階では、男子のペースメーカーは2段階に分けて考えています。一つはレゲセらアフリカ勢が中心となり、2時間2分台のフィニッシュをイメージしています。もう一つは2時間4分40秒から5分30秒くらいがターゲットタイムとなります。東京五輪の3枠目を狙い、日本勢の大半が付いていくのではないでしょうか。ペースメーカーが外れる30㎞までいかに力を残して走れるのか、そこからの展開が楽しみでなりません。
また、高いポテンシャルを持つ佐藤悠基(日清食品グループ)や、村山謙太(旭化成)も楽しみな選手です。2016年の第10回大会では22km付近まで日本人で唯一先頭集団に食らいつく攻めの走りを貫きました。その他にも昨年9月のMGCに出場した多くの選手がエントリーしています。誰がトップでフィニッシュするのか、興味は尽きません。
近年、日本の男子マラソンは活性化されてきました。「入賞なし」に終わったリオデジャネイロ五輪からこれまでとは違うアプローチで成長を遂げてきました。日本記録の1億円ボーナスとMGCという代表選考の二つが軸となり、タイムが伸びていき、設楽、大迫と二度も日本記録が更新されました。選手からは「2時間5分台、6分台を目標に」という声が多く聞こえるようになりました。世界基準を掲げる東京マラソンもその一因となっていればうれしく思います。
女子は海外勢に期待が高まります。前回覇者のルティ・アガ(エチオピア)が参戦します。2時間18分46秒のタイムを持つベルハネ・ディババ(エチオピア)も優勝を狙ってきます。その他にも2時間19分台の自己記録を持つ選手が3人います。アフリカ勢を中心に世界レベルの戦いが繰り広げられるでしょう。
レゲセらの、2時間2分台を目指す世界基準のハイレベルな走りを見れば、胸が高鳴ります。東京五輪の3枠目を懸け、日本勢も序盤からハイペースで刻むはずです。最後まで競り合い、日本記録が迫ってくれば、さらにドキドキするでしょう。新たな歴史が刻まれる日になるかもしれません。コース、選手ともに世界に誇れる「グローバルスタンダード」な東京マラソン2020を存分にお楽しみください。
東京マラソンレースディレクター
早野忠昭