本日、海外・国内のマラソン招待選手、エリート出場選手を発表しました。
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東京マラソン2019エリートレース展望
東京マラソンは2017年の第11回大会から平坦な高速コースになり、好記録が生まれています。以前から掲げてきた「グローバル・スタンダード」と呼べるレースを展開できているのではないでしょうか。
一昨年は元世界記録保持者のウィルソン・キプサング(ケニア)が2時間3分58秒の日本国内最高タイムでフィニッシュ。初マラソンの設楽悠太(Honda)の一時キプサングへと迫る積極的な走りは「日本人でもここまでできるのか」と希望と勇気を与えました。
昨年はそのドラマの続きとなり、設楽が2時間6分11秒で16年ぶりに日本記録を更新しました。日本実業団陸上競技連合のマラソン特別強化策「Project EXCEED(プロジェクト・エクシード)」により、日本記録を樹立した設楽には1億円のボーナスが贈られ、大いに盛り上がりました。また、日本選手の9人が2時間10分を切る快走をみせ、多くの選手が世界と戦う覚悟を示してくれました。大会を通じて、日本男子マラソン界に新時代の風が吹き、なにものにも変えがたい感動があったことを鮮明に覚えています。
今年、第13回大会は、さらにエキサイティングなレースになるでしょう。
男子では世界歴代3位となる2時間3分3秒の自己記録を持つケネニサ・ベケレ(エチオピア)が参戦します。アテネ五輪と北京五輪のトラックで金メダルを獲得し、スピードがあります。果敢に攻めの走りをする選手でもあり、今大会の中心になりそうです。男子では唯一複数回優勝者(2014、2018)で試合巧者のディクソン・チュンバ(ケニア)、昨秋のジャカルタ・アジア大会で井上大仁(MHPS)と競り合ったエルハサン・エルアバシ(バーレーン)ら2時間4分台の選手が5人います。2時間5分台のケニア勢も2人います。海外勢がどのようなレースをするのか興味深いところです。
そして、最大の注目は昨年10月のシカゴマラソンで2時間5分50秒の日本記録を樹立した大迫傑(ナイキ)になります。初めての東京でどのような走りをみせてくれるのでしょうか。初マラソンとなる2017年のボストンマラソンは2時間10分28秒でフィニッシュ。続く福岡国際マラソンでは2時間7分19秒の好タイムをマークし、昨年のシカゴマラソンでは日本記録。走るたびに着実にタイムを縮めていき、まだまだ底は見えません。ベケレら海外勢と戦うとともに、自らの日本記録を更新する走りを期待したいと思います。
現時点では、男子のペースメーカーは2段階に分けて考えています。一つは30kmまでの1kmを2分57~58秒で刻み、2時間4分30秒から2時間5分10秒のフィニッシュをイメージしています。ベケレらアフリカ勢が中心となり、もちろん大迫も付いていくでしょう。ぜひ、他の日本勢も先頭グループのペースにチャレンジして、世界のレースを体感してほしいと思います。
もう一つのペースメーカーは1kmを3分で引っ張り、2時間6分35秒あたりがターゲットタイムとなります。昨年の大会で2時間8分8秒の7位に入った木滑良(MHPS)、2時間8分16秒の自己ベストを持つ中村匠吾(富士通)らは十分、2時間6分台を目指す力があると信じています。木滑と中村は「最低でも2時間7分台」と思って、挑むのではないでしょうか。
どうしても期待してしまうのは村山謙太(旭化成)の走りです。2016年の第10回大会では22km付近まで日本人で唯一先頭集団に食らいつく攻めの姿勢を貫きました。初マラソンでみせた強烈なインパクトを忘れることができません。村山は高速ペースの方が合っている印象があり、流れに乗れば、大化けする可能性を秘めていると考えています。
近年、日本の男子マラソンは活性化されてきました。昨年の大会で設楽、井上が2時間6分台をマーク。井上はジャカルタ・アジア大会を制しました。大迫がシカゴマラソンで日本人初の2時間5分台を記録すれば、昨年12月の福岡国際マラソンでは服部勇馬(トヨタ自動車)が2時間7分台ながら日本人で14年ぶりに優勝を飾りました。若い力が台頭し、世界との差は少しずつ縮まってきています。私は2020年の東京五輪までに2時間6分台の日本人選手を最低でも5人輩出できるようなレース作りをしていきたいと考えています。
今年は女子も豪華なメンバーが揃い、期待が高まります。海外勢では昨年9月のベルリンマラソンで2時間18分34秒の好タイムをマークして、勢いに乗るルディ・アガ(エチオピア)が中心となります。女子の複数のペースメーカーのうち、一つは2時間17分台のフィニッシュを目指す設定になるかもしれません。そのほかにもベテランのフローレンス・キプラガト(ケニア)ら2時間19分台の自己記録を持つ選手が3人います。
日本勢は既にMGCの出場権を獲得している昨年の大阪国際女子マラソン2位の前田穂南(天満屋)、ジャカルタ・アジア大会で銀メダルの野上恵子(十八銀行)が挑みます。リオデジャネイロ五輪1万メートル代表の高島由香(資生堂)は2度目のマラソンでMGCの出場権を狙い、初マラソンの一山麻緒(ワコール)は積極的な走りをみせてくれるのではないでしょうか。興味は尽きません。
男女ともに東京五輪を前に、東京のコースを体感したいトップ選手たちが集結しています。世界基準のハイレベルな走りを見れば、胸が高鳴ります。大迫らが競り合い、日本記録が迫ってくれば、さらにドキドキするでしょう。新たな歴史が作られるかもしれません。コース、選手ともに世界に誇れる「グローバル・スタンダード」な東京マラソン2019を存分にお楽しみください。
東京マラソンレースディレクター
早野忠昭
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