いよいよ今週末に迫ったアボット・ワールドマラソンメジャーズ シリーズXのスタート。シリーズ初戦、そしてその6日後に開催される第2戦において、世界の素晴らしいマラソンランナー達が集結します。
シリーズIXが東京マラソン2016においてスリリングな結末を迎えてから2ヶ月を待たずして、4月18日のボストンマラソンでシリーズXがスタート。続く4月24日にはVirgin Moneyロンドンマラソンが開催となります。オリンピック開催の年である今年は、全8大会12ヶ月に渡り開催され、代表の座をかけた争いや、世界ベストの男女マラソンランナーに送られる賞金100万ドルの獲得を目指す熾烈なポイント争いが繰り広げられることとなります。
次に控えるリオデジャネイロ オリンピック・パラリンピックにおける男女マラソンレース、そして秋には、ベルリン、シカゴ、ニューヨークシティと続くAbbottWMM大会。まずは春の2大会で上位5位以内につけてポイントを獲得することが、1年後に終結するシリーズXの賞金獲得を狙う上で重要となります。
ボストンマラソン 男子注目選手
来年4月の2017ボストンマラソンで幕を閉じることとなるシリーズⅩ、初戦は第120回のボストンマラソン。男女ディフェンディングチャンピオン、2012年オリンピック金メダリスト、シリーズIXトップ5入りを果たした2選手(2015ボストン優勝者であるレリサ・デシサと、2015ボストンで2位となり、北京の世界選手権で銀メダルを獲得した、同じくエチオピア人のイマネ・ツェガエ)らが出場します。
ボストンで2度の優勝を果たしているデシサは昨年、4つのマラソン大会に出場。ボストンで優勝、ニューヨークシティで3位、ドバイで2位、世界選手権で7位となっています。一方ツェガエは、国際的なマラソン大会で8度の優勝を果たしています。
この2人を含め、2時間5分を切る自己ベストを保持する選手が6人、2時間6分を切る選手は10人以上を数えます。中でも最も速い自己ベストを保持するのが、サミー・キトワラ。昨年2位に入った Bank of Americaシカゴマラソンにおいて、2014年に2時間4分28秒というタイムを出しています。
ケニアのウィルソン・チェベットは、昨年3位に入っており、2016年は表彰台を狙っています。一方、元ボストンチャンピオンのウェスリー・コリル、元東京チャンピオンのマイケル・キピエゴの両者も、AbbottWMMレースの勝ち方を心得ています。コリルはボストンを3回走っており、2012年のボストン、そしてロサンゼルスマラソンでも2度の優勝を誇る、世界でも安定的な実力を誇るランナーです。
注目選手の中には、近年ドバイの平坦なコースで速いタイムを出しているツェガエ・メコネン、レミ・べルハヌも含まれています。また、エチオピアのゲトゥ・フェレケも、2012年ロッテルダムで出した自己ベストで2時間5分を切っています。
レミ・べルハヌ、Stephen Chebogut 、デリベ・ロビの俊足トリオも優勝を狙っています。ベルハヌは2015年のドバイとワルシャワで優勝。Chebogutはアイントホーフェン、ランス、イスタンブールで優勝。一方ロビは、昨年のアイントホーフェンで2位、2014年マラケシュでは優勝しています。3者揃って2015年に自己ベストを出しているのです。
アメリカ人エリート選手には、昨年夏の世界選手権でアメリカ人トップとなったイアン・バレル。2014年全米20K選手権で優勝したギルマ・メチェソ、ザンビア出身ではあるものの米国在住でトレーニングをしているJordan Chipangamaという顔ぶれが揃う。Chipangamaはサンディエゴとサンノゼ・ハーフで優勝しています。
ボストンマラソン 女子注目選手
フェレケの妻であるティキ・ゲラナが女子エントリーリストのトップを飾ります。オリンピックチャンピオンである彼女は、リオで再び金メダルを獲得すべく闘志を燃やす中、ボストンマラソンにも初出場します。
彼女の勝利を阻止しようとするのが、同じエチオピア人選手たち。今年のドバイで優勝しているティルフィ・ツェガエと、2年前のボストンで2位、2015年は3位となっているブズネッシュ・デバです。
歴史あるボストンのコースにおける優勝のカギは、昨年のキャロライン・ロティチの優勝に見られるように、速いタイムばかりではありません。ロティチは2016年も1位の座を守るべく戻って来ますが、過去に2度、位で終わっている同郷ケニアのジョイス・チェプクルイも、優勝を狙っています。
2014年ボストンで2位、昨年は3位となっているデバは、米国開催のマラソン8大会で優勝しています。ツェガエはベルリン、東京、パリ、ドバイで優勝しています。
ボストンでの経験を活かして参戦するのが、オリンピック3回出場のJelena Prokopcuka。彼女はニューヨークシティで2度の優勝、ボストンでは2度の2位という結果を残しています。同じくオリンピアンのジョイス・チェプクルイは、昨年のアムステルダムとホノルルで優勝、ボストンでは10位に入っています。
今度のボストンが初マラソンとなる米国のNeely Spence Graceyにも期待が高まっています。ハーフマラソンの自己ベストは1時間9分59秒。アメリカ勢は他にSarah Crouch (formerly Sarah Porter)も出場。Crouchは2014年シカゴで6位に、昨年は12位に入っています。中国のLamei Sunもボストンでデビューを飾ります。Sunは東営マラソンで優勝、2012年北京で2位に入っています。
ロンドンマラソン 男子注目選手
シリーズ初戦となるボストンが魅力的なスターターだとすれば、ロンドンは食欲をそそるメインディッシュのようなレースになりそうです。シリーズIX優勝者のエリウド・キプチョゲ、メアリー・ケイタニー、そして、シリーズVIIIの男子優勝者であるウィルソン・キプサング、そしてシリーズVII女子優勝者のプリスカ・ジェプトゥーを始めとした歴代の俊足ランナー達が、AbbottWMMポイント獲得を目指し闘います。
加えて、昨年はキプチョゲとキプサングに次ぐ3位に終わった、男子世界記録保持者のデニス・キメット、現世界チャンピオンのギルメイ・ゲブレスラシエとマレ・ディババ、ロンドンのディフェンディングチャンピオンであるキプチョゲとティギスト・トゥファも出場し、男女ともに素晴らしいレースが期待されます。
更には、世界記録を何度も更新しているエチオピアの陸上界レジェンド、ケネニサ・ベケレも出場予定。女子では、ハーフマラソン世界記録保持者であり昨年のシカゴチャンピオン、フローレンス・キプラガトも名前を連ねています。
2013年以降に出場した6大会において、5度の優勝と1度の2位という素晴らしい結果を残しているキプチョゲは、2時間5分を切る5選手、2時間10分を切る17選手(うち2015年の上位5選手を含む)が揃う男子選手陣の中でも注目の選手です。
キプサングは、2位に終わった昨年のリベンジに燃えています。キメットも、世界選手権および12月の福岡国際マラソンで途中棄権に終わっており、強い意気込みでこのレースに臨んでいるはずです。
これら3選手が戦うこととなるのが、ケニアのスタンレー・ビウォット。彼は昨年11月のニューヨークでAbbottWMM大会における初勝利を収めています。
ベケレも、ケガによる1年の休養を終えての復帰初戦となるため、注目を集めています。他にも、2時間6分を切るエチオピアのトリオ、Tilahun Regassa(昨年5位)、Sisay Lemma(2015年フランクフルト優勝)、アベラ・クマ(昨年ロッテルダム優勝)も出場予定です。
北京の世界選手権で優勝し世間を驚かせたゲブレスラシエ(20歳)は、他のエリトリア選手4人とともにロンドンに初挑戦し、表彰台を目指します。
ロンドンマラソン 女子注目選手
女子のレースでは、昨年ケニアの注目4選手を下し優勝したトゥファが、再度優勝を狙います。ロンドンでの勝利の後、世界選手権で6位、ニューヨークでは3位となり、シリーズIXにおいて5位に入った彼女は、昨年の優勝がまぐれではないことを示すべく、ロンドンに帰って来ます。
28歳のトゥファは昨年、メアリー・ケイタニーの3度目のロンドン優勝を食い止めましたが、2016年もチャンピオンの脅威となるに違いありません。ケイタニーは、2012年ロンドンでの優勝の際に2時間18分37秒(アフリカ記録)というタイムを出しており、出場予定選手の中で最も速い選手です。彼女を含め、2時間21秒を切る選手が8人、うち4人が2時間20分を上回るタイムです。
その一人がディババで、2時間19分52秒という自己ベストを保持しています。Bank of Americaシカゴマラソン優勝者である彼女は、昨年のシリーズリーダーボードでケイタニーと同点トップに付けており、ロンドンには初出場となります。
2時間20分切りの選手たちの中には、ロンドンは5度目の出場となるキプラガトも名を連ね、初優勝を狙います。ドバイマラソンで3度の優勝を誇り、昨年4位のアセレフェチェ・メルジアも出場予定です。
ケニアの強豪4選手を完成させるのは、3年前のロンドン覇者でありオリンピック銅メダリストのジェプトゥーと、元ロッテルダムマラソン優勝者で2015年6位のジェミマ・スムゴングです。
アボット・ワールドマラソンメジャーズ 車いすシリーズ
来週のボストンを皮切りに初めてスタートするアボット・ワールドマラソンメジャーズ車いすシリーズでは、世界の有力車いす選手が集結します。
これはマラソンと並行して行われ、T53/54クラスの車いす選手が、メジャー大会および、9月のリオデジャネイロ パラリンピックにおいて上位5位に入ることで獲得できるポイントを競い合うものです。
最もポイントを稼いだ男女優勝者にそれぞれ5万ドルの賞金が授与されることとなるシリーズは、2017年4月のボストンマラソンで幕を閉じます。選手は、シリーズの8大会中少なくとも5大会に出場する必要があります。
来週のボストン・ロンドンの車いすレースでは、昨年の世界チャンピオンでありロンドンチャンピオンでもあるジョシュア・ジョージとタチアナ・マクファーデン(ともにアメリカ)、2012年パラリンピック男子優勝者でありロンドンマラソンでは6度の優勝を誇るデビッド・ウィアー(イギリス)。女子パラリンピックチャンピオンのシャーリー・レイリー(アメリカ)、女子世界記録保持者のマニュエラ・シャー(スイス)、同じくスイスのスター選手である、元世界チャンピオン、昨年のボストン覇者でもあるマルセル・フグ、パラリンピック2連覇、世界選手権でも2度の優勝を誇り、ロンドンの大会記録保持者かつ、昨年10月のシカゴマラソン優勝者のクート・フェンリー(オーストラリア)ら有名選手が多数名を連ねています。
そして、男子レースでは、ボストンでの優勝は10回を数える南アフリカのエルンスト・バンダイク、女子では、ボストンで5度の優勝を果たし、東京マラソンでは9連覇を達成している日本のベテラン選手、土田和歌子も忘れてはなりません。土田選手は2月の東京では、無敵のマクファーデンの3年間に渡る14大会連続優勝を食い止めたのです。
1年サイクルのスケジュールで開催され、これまで以上にエキサイティングな闘いとなる新たなAbbottWMM車いすシリーズは、パラ競技としてのマラソンレースにおいて、新たなマイルストーンとなることでしょう。
日本ではフジテレビNEXTにてボストンマラソン、ロンドンマラソンが生中継されます。
世界最高峰の闘いに是非、ご注目下さい。
・ボストンマラソン 2016/04/18(月) 22:20~25:20 生放送
・ロンドンマラソン 2016/04/24(日) 17:00~20:20 生放送