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担当:喜熨斗智也(救急救命士)

第5回 マラソンランナーに多い怪我・病気

マラソン中に体調が悪くなったり、怪我をしてしまい応急処置を受けるランナーも少なくありません。このページは救急、応急手当がテーマです。ランナーの怪我や病気はどのような症状が多いのかを知っておくことによって、その対策や心構えができます。今回はマラソンランナーに多い怪我(図1)について説明していきます。

マラソンランナーに多い怪我

1. 足の筋肉痛・関節痛
2. 靴ずれ、転倒、まめなどの擦り傷(皮膚の怪我)
3. 体温低下
4. 脱水症状・熱中症
5. 転倒・まめ
6. 心停止・その他

図1:東京マラソン2007〜2019大会でモバイル隊・BLS隊が救護所以外のコース上で救護対応したランナーの傷病割合

1番多い『足の筋肉痛・関節痛』

市民マラソンランナーに起こる最も多い怪我は膝の関節痛、太ももやふくらはぎの筋肉痛、こむら返りといった筋肉や関節の痛みです。

2番目に多い『靴ずれ、転倒、まめなどの擦り傷(皮膚の怪我)』

次に多い症状は靴ずれや走っている最中の股擦れなどの皮膚の怪我です。これはウエアが擦れることによって脇や乳首にも同様の症状が出やすくなります。

3番目に多い『低体温』

マラソンで起こる病気は天候にとても左右されやすく、天気や、気温、湿度などの、環境によって起こる病気が熱中症や低体温症です。年によって20℃近く上昇する日もあれば、0℃近く下がる日もあります。直前の天気予報をしっかりとチェックし、気温による体調不良を起こさないように体温管理をしっかりとしましょう。

4番目に多い『熱中症・脱水症状』

体温調節や給水がうまくいかずに起こるのが熱中症・脱水症状です。吐き気・嘔吐、めまい、頭痛といった症状が現れます。このような症状が起きたら、走るのを中断して、救護所を受診しましょう。無理に走ると意識がなくなったり、全身痙攣を起こしたり、命の危険な状態になることがあります。給水は水だけでなく、スポーツドリンクのように塩分や糖分も一緒に取るようにしてください。

最も気をつけなければならない『心停止』

マラソン中の病気で最も恐いのは、心臓が突然止まってしまう『心停止』です。東京マラソンでは自転車救護チームによって応急手当を受けたランナーのうち、約1%がこの心停止でした。この状態ではできるだけ早く胸骨圧迫(心臓マッサージ)や人工呼吸、AEDによる電気ショックが必要になります。

その他には過換気症候群などの呼吸困難の症状、貧血、不整脈、喘息などの症状が出たランナーもいました。
これら救護を受けたランナーのうち、約78%はすぐに競技に復帰できるくらいの軽傷でしたが、19%はリタイアをして救護所等に行くこととなり、2.3%は救急車で病院に行くくらい重い症状でした(図2)。

図2:東京マラソン2007〜2019大会でモバイル隊・BLS隊が救護所以外のコース上で救護対応したランナーの応急手当後の転帰

救護を受けた方の中にはすぐに救急車で病院に行く必要があるランナーもいますが、多くのランナーの怪我や病気は未然に防ぐことが可能なものや、軽いものであれば自らの手当てで対応できるものが多いのです。
マラソン中の怪我や病気に対して、自らできる、またランナー同士でできる応急手当などについて説明していきます。是非毎回読んで頂き、参加するランナー皆さんが安全に、またお互いを助け合いながら完走できる知識を身に付けて頂きたいと思います。

救急救命士 喜熨斗智也

  • 東京地下鉄株式会社