大会について

東京マラソン2025 に関わるすべての方へのご案内です。

車いすマラソンエリートレース

車いすマラソンレースの様子
車いすマラソンレースの様子

車いすマラソンの国際化について

2016大会から、車いすマラソンレース(T53・T54)をWorld Para Athletics公認大会として開催。
さらに、2017大会からは、アボット・ワールドマラソンメジャーズ(AbbottWMM)車いすマラソンレースシリーズに加わり、ポイント獲得対象レースとなっています。

レース概要

1 種  目 車いすマラソン(エリート)
2 公  認 World Para Athletics
3 コ ― ス 東京マラソンコース(日本陸上競技連盟・ワールドアスレティックス /AIMS公認コース)
東京都庁~水道橋~上野広小路~神田~日本橋~浅草雷門~両国~門前仲町~銀座~田町~日比谷~東京駅前・行幸通り
4 対象クラス T53・T54
5 制限時間 男子1時間50分、女子2時間00分
6 参加人数 30人

車いすエリートレース展望

車いすレースディレクター 副島 正純

 昨夏にパリ2024パラリンピックが終わり、2025年は次の2028年ロサンゼルス大会に向けた新たなサイクルの1年目となります。東京マラソン2025は車いすマラソンのメジャー大会の初戦でもあり、今後を占う重要なレースです。これからの車いすマラソン界を展望でき、見応えあるレースをお見せしたいと思い、世界の精鋭たち男女それぞれ8選手を招聘しました。

 男子は東京マラソン2022、2023大会を連覇し、昨年はパリ2024パラリンピックで金メダル、アボット・ワールドマラソンメジャーズ(AbbottWMM)シリーズXVIも優勝するなど絶対王者のマルセル・フグ(スイス)がケガの影響もあり、出場が叶いませんでした。しかし、フグのいないレースでも面白い展開が期待できるメンバーを考えました。

 まず、近年、トラック種目だけでなくマラソンでも台頭著しい中国選手2名に声を掛けました。一人はパリ大会銀メダルの金華で、11月の大分国際車いすマラソンで初優勝するなど、今とても勢いのある選手です。“史上最高難度”と言われたパリ大会のコースでも優勝したフグに中盤まで食らいつく強さを持ち、またスパート力もあります。もう一人の羅興伝もパリ大会6位、大分国際では3位に食い込んでいます。二人とも東京マラソンは初めてなので、コースをどこまでつかんでいるかは分かりませんが、二人の動きに注目です。

 海外からはもう二人。ダニエル・ロマンチュク(アメリカ)はパリ大会は4位で、メジャーズの大会でも常に上位に入っています。安定した力を常に発揮できるアスリートで、東京マラソンも過去2大会出場し、いずれも2位。初優勝の期待もかかります。ユ・ビョンフン(韓国)はパリ大会12位で、東京マラソンは2019年以来の出場です。ベテランの走りにも注目したいと思います。

 対する国内招待選手はまず、前回覇者でパリ大会銅メダルの鈴木朋樹(トヨタ自動車)。さらに同8位の吉田竜太(SUS)に、AbbottWMMシリーズXVIで6位の渡辺勝(TOPPAN)、同9位の洞ノ上浩太(LINEヤフー)です。

 鈴木はパラリンピックで自身初のメダルを獲得し、日本のエースとして大きな手応えをつかみました。ただし、パリ大会と大分国際の2戦連続で中国の金に競り負け、悔しさも味わっています。冬季練習でどう修正し、強化してきたのか。その成果を発揮して、金へのリベンジを期待したいところです。

 レース展開としては、金のパターンは集団にいて終盤にタイミングを見計らってスパートして逃げる形が多い印象です。したがって、先行逃げ切り型のフグとは違う、新たな展開のレースが見られるのではないでしょうか。おそらく、スタートから鈴木とロマンチュクが仕掛け、金や羅がついていくだろうと思います。ここに、吉田や渡辺、洞ノ上がどうついていくかにも注目です。

 また、招待選手ではありませんが、岸澤宏樹(日立ソリューションズ)や佐々木凜平(ANAORI.A.C)など伸び盛りの若手にも果敢な走りを期待しています。さらに中国の章瑩は東京2020パラリンピックのマラソンで11位、パリ大会では100mで6位などマルチな選手のようなので、スタート後に先頭集団についていければ、上位争いに絡む可能性があります。

 こうしてみると、今回は先頭が7、8名の大集団になる可能性があります。そうなると、先頭を交代しながらペースを維持するローテーションと呼ばれる車いすレースの特徴的な走りも見られそうです。また、集団を小さくしようと、橋の上り下りやコーナーを使って細かな仕掛けをする選手もいるでしょう。誰がどこで仕掛けるのか、集団から抜け出せるのか目が離せません。いずれにしても、勝負は終盤までもつれ、誰が勝つか分からない面白いレースになると期待しています。

■女子は世界のトップランナーが勢ぞろい

 女子はパリ2024パラリンピックのメダリスト3名をはじめ、メジャー大会の上位常連選手たちがほぼ顔を揃える8名を招聘しました。世界屈指の競り合いや高速レースが期待され、女子の車いすマラソンのレベルの高さを間近に見るチャンスです。

 まず、レースの軸となるのはスイスのカテリーヌ・デブルナーでしょう。昨年はメジャー大会で4勝を挙げ、AbbottWMMシリーズXVIも制しました。デブルナーはスタートから飛び出して先頭に立ち、一人でも行き切る強さを持っています。タフなコースだったパリ大会のレース運びは圧巻でした。上りにも下りにも強く、スキがありません。東京マラソンは初出場。世界記録保持者の走りにぜひご注目ください。

 海外招待選手は他に、パリ大会銀メダルのマディソン・デ ロザリオ(オーストラリア)、同銅メダルのスザンナ・スカロニ(アメリカ)、同4位のマニュエラ・シャー(スイス)、同5位の周召倩(中国)。そして、イーデン・レインボー・クーパー(イギリス)はパリ大会では終盤、腰痛のため途中棄権でしたが、初出場だった前回の東京マラソンでは2位に入っています。経験と実績のある選手たちばかりです。

 日本からはパリ大会6位の土田和歌子(ウィルレイズ)と、同12位の仲嶺翼(旧姓・喜納/ミサトスイミングスクール)を招聘しました。海外勢に食らいつき、手応えあるレースを見せてほしいと思っています。

 レース展開としては、デブルナーがスタートから仕掛けることが予想されますが、女子は頻繁に対戦している選手たちなので、お互いに対策を練っているのではないでしょうか。序盤のアップダウンでデブルナーを逃がさず集団が形成されれば、その後の平坦なコースでは競り合える力は十分ある選手ばかりです。デブルナーをけん制しながら、皆でうまくローテーションしてレースを進められれば、フィニッシュ直前のスパート合戦まで混戦となる可能性もあります。

 パリ2024パラリンピックで見せたように、デブルナーがスタートから飛び出して独走優勝するのか、それとも他の選手たちが協力してデブルナーをとらえ、集団を形成するのか。その集団ができた場合、どのような駆け引きが繰り広げられるのか。力走だけではなく、心理戦にも注目です。

■10㎞地点の攻防にも注目

 車いすレースの一番の魅力はスピード感でしょう。大会記録は男子がフグのもつ1時間20分57秒、女子はシャーの1時間36分43秒で、ともに2023大会で樹立されました。当日の気象条件にも左右されますが、有力な初出場選手も多い今年はどんな記録がマークされるでしょうか。

 スピードレースの後押しとして今年も10km地点に2つの「ボーナスポイント」を設定しました。ひとつは、「AbbottWMM車いすボーナスポイント」で、この10km地点を男女それぞれ先頭で通過した選手は8ポイントを獲得できます。もう一つは、東京マラソン独自の「大会記録更新スプリットタイムボーナス」です。男女それぞれの大会記録を基準にして定めた10kmの目標タイムを上回った選手を対象に男女各3位までに賞金(1位:15万円、2位:10万円、3位:5万円)を授与します。目標タイムは、男子は18分50秒、女子は21分45秒です。高い目標ですが、序盤5㎞までの下り基調も利用した果敢な走りで、ポイントも賞金も積極的に狙ってほしいです。

全招待選手情報 :  男子(8名)   女子(8名)  ※2025年1月23日現在
車いすエリート選手一覧はこちら 
※2025年1月23日現在

副島 正純(そえじま まさずみ)
車いすレースディレクター

副島正純の写真

パラリンピック銅メダリスト

【所属先】
一般社団法人ウィルチェアアスリートクラブ ソシオSOEJIMA
マラソン自己最速記録:1時間18分50秒(2011ボストンマラソン)
2004年より4大会連続パラリンピック出場

【略歴】
1970年生まれ。
23歳の時、家業である鉄工所を手伝い中に鉄板落下の事故により脊髄を損傷し、車いすの生活となる。入院中に障がい者スポーツと出会い、スポーツの楽しさに魅了され、車いすマラソンを開始。
2007年からは毎年ワールドマラソンメジャーズ大会に出場し、東京マラソン、ボストンマラソン、ニューヨークシティマラソン、ベルリンマラソンなどの多くのマラソン大会で優勝している。
2014年4月、自身も世界トップアスリートとして活動しながら、一般社団法人を立ち上げ、車いすの子ども達が世界レベルの競技者を目指せるような環境の提供と指導を行い、子ども達のチャレンジをサポートしている。

【主な戦歴】
2007~2009、2011、2013 東京マラソン優勝
2004 アテネパラリンピック 400m×4リレー 銅メダル
2007 世界陸上選手権大阪大会 車いす1500m 銀メダル
2012 ロンドンパラリンピック マラソン4位(日本人最高位)
2011 ニューヨークシティマラソン優勝
2007、2011 ボストンマラソン優勝
2007、2010 ベルリンマラソン優勝
2005~2010、2013~2017 ホノルルマラソン優勝
2008~2010 シカゴマラソン2位

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