本日1月22日(月)会見を行い、海外・国内のマラソン招待選手、エリート出場選手を発表しました。
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東京マラソン2018エリートレース展望
東京マラソンは昨年の第11回大会から、平坦となった高速コースとなり、男女ともに日本国内最高タイムで決着となりました。東京マラソンが以前から掲げてきた「グローバル・スタンダード」と呼べるレースを展開できたのではないでしょうか。
冬のやわらかな日差しに映る赤れんがの東京駅を背に、前世界記録保持者のウィルソン・キプサング(ケニア)が、2時間3分58秒でフィニッシュを駆け抜けるシーンは胸が熱くなりました。日本勢では、初マラソンの設楽悠太(Honda)の積極的に海外勢へと迫る走りや、ロンドン世界陸上の代表となった 井上大仁(MHPS)など、新しい時代を予感させました。
今年、第12回大会は、さらにエキサイティングなレースを期待してください。2時間2分57秒の「世界記録」と2時間6分16秒の「日本記録」を狙える選手たちを招聘することができました。
男子では2年連続でキプサングが参戦します。昨年は中間点を1時間1分22秒で通過し、30kmまで世界記録更新が狙える「これぞ世界のトップ」という圧巻の走りでした。レース後には「ライバルや気象条件など条件がそろえば世界記録が出るコース」と話しています。東京にはいい印象が残っているでしょう。しかも一度経験したコースです。昨年の記録をさらに伸ばし、本気で世界記録の奪回を狙ってくるはずです。
キプサングの対抗馬となるのはテスファエ・アベラ(エチオピア)でしょう。2時間4分24秒の自己記録を持ち、面白い存在になりそうです。リオデジャネイロ五輪銀メダリストで、2016大会優勝者のフェイサ・リレサ(エチオピア)、昨年35kmまでキプサングに付いていったディクソン・チュンバ (ケニア)もいます。キプサングとともに先頭集団を形成して、世界記録を更新するペースで進んでいくのではないでしょうか。
ペースメーカーは昨年同様、3段階に分けて考えています。第1ターゲットとなるのが「世界記録 ペース」で、1km2分54~55秒。第2ターゲットは「日本記録ペース」で1km2分58秒を刻んでいきます。第3ターゲットは「2時間6分台後半から7分台」で1km3分になります。このペースで30kmまで引っ張ります。まずは、どの選手がどのペースメーカーに付いていくのか、興味のあるところです。
2時間6分台を記録した日本人は過去3人で、2002年10月に高岡寿成(カネボウ)が現在の日本記録である2時間6分16秒を樹立してから、15年以上の月日が経ちます。なかなか2時間6分台をマークする選手は現れません。しかし、箱根駅伝を見ると、学生ランナーは1km3分を切るペースで着実に20kmを刻みます。本気でオリンピックを目指す選手たちがこのペースで30kmまで行けないはずはありません。1km2分58秒は、決して苦ではないと思います。
設楽と昨年日本勢トップの井上には期待が高まります。特に設楽は、潜在能力を考えると、2時間6分台、さらには日本記録の更新が視界に入るのではないでしょうか。私は「2時間5分50秒もあり得る」と考えています。昨年は33km付近まで日本記録ペースを保ち、一時、キプサングを追い掛けた走りは「日本人でもここまでできるのか」と希望と勇気を与えました。あれこそが世界と戦うということです。あとは残り8~9kmをどう走り切るのか。あの時に見えた課題を克服するためにこの1年間を費やしてきたのではないでしょうか。昨年9月にはハーフマラソンで日本記録を更新しています。着実に力をつけ、今度はどのような走りを見せてくれるのか。楽しみでなりません。
井上も昨年は最初の5kmを14分31秒で入り、10kmは29分13秒で通過しました。設楽とともに果敢に攻める姿勢は大きなインパクトを与えました。結果として、2時間8分台で終わっても、世界と戦う強いメッセージが伝わってきました。志も高く、2時間7分台を出せる力は十分にあると思っています。
日本勢にとって、一つの指標となるのは昨年12月の福岡マラソンで大迫傑(ナイキ・オレゴンプロジェクト)が記録した2時間7分19秒です。このタイムは大いに刺激になったでしょう。誰もが「負けてたまるか」と意識して走るはずです。
力のある市田孝(旭化成)はニューイヤー駅伝でも調子の良さを示し、好走の雰囲気が漂います。大石港与(トヨタ自動車)も前評判が高く、日本人トップを脅かす存在になるかもしれません。福岡国際でマラソンを経験した神野大地(コニカミノルタ)、学生長距離ナンバーワンの呼び声が高い鈴木健吾(神奈川大)のマラソン初挑戦も注目の的です。
2020年東京五輪に向けて、日本実業団陸上競技連合はマラソン特別強化策「Project EXCEED (プロジェクト・エクシード)」を15年からスタートさせました。2時間7分を切った実業団登録選手には1000万円、日本記録を樹立した選手には1億円のボーナスが贈られます。
複数の日本人選手が30km地点を1時間30分切るタイムで通過すれば、「2時間6分台が出るぞ。 1億円を手にできるのか?」と気持ちが高まります。そんなレースを期待しています。私は3人以上の日本人選手が「2時間6分台」を出せるようなレース作りをしていきたいと考えています。近い将来、必ずや「6分台」を実現できると信じて疑いません。
一方の女子も昨年は国内最高の2時間19分47秒で決着しました。今大会もルティ・アガ(エチオピア)ら持ちタイムが2時間20分台の選手が3人。5年連続となるベルハネ・ディババ(エチオピア)もいます。東京五輪を前に、東京のコースを体感したい選手たちが集結しています。
世界トップクラスの走りを見れば、必ずドキドキします。世界記録、日本記録が迫ってくれば、さらに胸が躍ります。コース、選手ともに世界に誇れる「グローバル・スタンダード」な東京マラソン2018を存分にお楽しみください。
東京マラソンレースディレクター
早野忠昭
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